絵心

夕暮れの街を、カメラぶら下げて歩いてた。



幼い孫を、おんぶして歩くお婆さん。


「僕、そろそろ降りないかな?」

と、お婆さん。


「いややいやや、もっと乗っときたい」

って、だだこねてるチビちゃん。



自分の小さな時も、この子と同じように、よくばあさんにおぶってもらって、


いつも降りたくないと、だだこねてたの思い出した。





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昨年の暮れに祖母が亡くなって、もう100日が過ぎた。



自分が物心付いた頃から、祖母は毎晩寝る前に、


これに自由に絵を描きなさいと、大きな画用紙を一枚渡してくれた。


毎晩、鉛筆やマジックで、自分が好きな動物や戦艦の絵を夢中で描いた。


その横で、祖母も動物やちっちゃい子供の絵を描いてた。


祖母の絵は、とても上手く、カバやゾウがほんとに生きて歩きそうな絵だったのを覚えてる。


自分が絵を描くことに対して、ここを直しなさいとか、ここをこうしなさいとか一切口を出さず、


良いとも悪いとも言わずに、ただ自分の横に並んで同じように絵を描いた。


おかげで、いつのまにか自由に好きなように絵を描くことが好きになってた。


図画の授業では先生の教えを無視して、独特な絵を描いて、よく賞をもらってた。



毎晩、祖母と絵を描いてたことが、今の撮影に生かされてるとよく考える。


幼い僕に、絵心を宿してくれた祖母に深い感謝を。




祖母が亡くなった次の日の夜、夢を見た。


デパートで、うちの長男が迷子になって、必死で探してたら、祖母が長男の手を引いて現れた。


「しっかり子供の手、握ってなきゃあかんよ」って、ほほ笑んでた。






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